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ミステリや恋愛ゲームetc.の感想をゆるっと書いているブログ

孔版印刷二色刷りメモ

C91の新刊表紙をeditNetプリンテックさんにお願いしました。
孔版印刷+特殊紙+二色刷を試してみたので、二次創作本の表紙ではありますが感想など書き置いておこうと思います。
(原稿作成については間違いもあるかもしれませんので、印刷会社さんのサイトや資料で確認をお願いします)
完成品はスキャナがないので全て写真に撮ったものです、見づらくてすみません。 

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作家小説/有栖川有栖

『作家』を主人公にした短編8本。
有栖川有栖はミステリしか読んだことがなかったので、てっきりミステリなのかと思っていましたがホラー風味だったり真犯人を明示しないお話だったりで新鮮でした。
(ここではホラー…なのか…?と悩んでミステリカテゴリにしています。)

一番好きだったのは『書かないでくれます?』と『サイン会の憂鬱』です、『夢物語』も何度か読むとハマりそう。

気になったお話の感想をちょっとずつ書きたいと思います。

殺しにくるもの

本を読んだ人、感想を書いた人を作者が殺してまわっていた…という話だと理解しましたが、読者をどうやって割り出していたのか(感想の手紙や日記サイトで?)、殺害手順(主に移動面)など、普段の推理短編集だと解決される部分が全く明かされないままなので、ちょっとだけもどかしさを感じます。

サイン会の憂鬱

そんなに売れていない作家が編集部都合で地元の小さな書店でサイン会をすることになって…
というお話で、『地元に戻りたくない気持ち』『編集に従わざるを得ないやるせなさ』みたいなものが題材なのかな…と思っていたら、段々狂気じみてきて、語り手の主人公が見ているのは現実なのか妄想なのか、夢なのか…?という展開になるのがとても好きでした。
最終部で、夢オチか…と思わせておいて、殺した話だけは本当だった、というのも好き。

書かないでくれます?

雪女伝説の、『自分のことを誰にも話さないこと、と伝えていたのに、のちに結婚した相手(雪女自身が姿を変えていた)に語ってしまい激怒される』という部分をベースにしたお話。
和久井さんが出てきたあたりでオチはだいたい読めてしまうのですが、時々描写される運転手の口元のカットなどを映像で見てみたいと思いました。

夢物語

夢の中から出られなくなった作家が『物語』の存在しない世界にやってきて、シェイクスピアや昔話、映画など記憶にある物語を語ることで英雄扱いされる…というお話。
オチについて幾通りか(少なくとも二通り)の解釈ができるようになっている、と文庫版あとがきにありましたが、いまいち読み切れず…検索したけど考察も見つからなくてもやもやしてます。

彼女の最後の言葉、『とても…素晴らしい物語だわ』という部分。

  • 彼女は『物語』というものを、主人公が語っていたものが自作のものではないと知っていた。
  • 主人公の決死の独白も、彼女にとっては『物語』だと理解された。

このあたりなんでしょうか……
もっと何度も読めばわかるのでしょうか……うーん。

結んで放して/山名沢湖

同人活動(同人誌)』をテーマにした連作短編。

帯の煽り文に
『あの日、あの喫茶店には、漫画を描く人が4人いた。
時を経て、漫画を描き続けているのは千畝ひとりとなったーーー。』
ってあるように、色々な理由で同人活動から離れていく人や、活動を続けていくくるしさ、楽しさが山名先生の柔らかなタッチで描かれていてとても好きです。

じんわり刺さったり、暖かくなったり、自分自身が昔感じた楽しさが思い出されたり、そしてどのお話も最後には泣いてしまう。

同人活動、自分もしていて思うんですけど、やっぱり「趣味」なんですよね。
「趣味」だから、学生の頃は思う存分のめり込めたりする反面、社会人になると、時間の制約・結婚出産・生活サイクルの変化とかで、以前ほどガッツリできなくなることも多いんだと思います。
『もう嫌だ』と思って辞めていく人はこの本の中にいなくて、自然な流れだったり、モヤモヤして段々描けなくなったりで、活動しなくなる人ばかり。
(由加ちゃんの辞める辞める詐欺はありますが)

千畝の一番近い友達が何年も言い続ける『筆を折ったわけじゃない、ネタさえあればまた描くよ~』も、出産後のルリさんの『筆を折ったわけじゃない、でも描いていた感覚も思い出せない』も、誰か・何かが悪いわけじゃない、同人が嫌になったわけでもない。
仕方ないこと、それがわかっていても、そんななかで、プロになって描き続けている千畝は『取り残されている』感じがして寂しさを覚えてしまう。
そんな気持ちが、丁寧に優しく描かれていて。

そよぎや架月が同人から少し離れてみて 『突然描きたいものが溢れてくる』っていう気持ちで復帰したり、ルリさんが子供とぷーすけと3人で本を作って以前の楽しさを思い出していくのを見て、自分のことのように嬉しさや楽しさを感じました。
ぷーすけも親の呪縛からは逃れきれていないものの、同人と違う形でも漫画を続けられて良かった。

自分自身もこれからの活動とか色々悩んだりしているところだったのでこのタイミングで読めて良かったなあと思います。
同人活動をしている人にも、何らかの理由でやめてしまった、停滞している人にもぜひ読んでもらいたい漫画です。